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疾患名まで、AIへ。RIZAP漏えい事故に見る『私用AI』という新たな脅威

RIZAPグループの子会社で、顧客の疾患情報や保険証記号番号までが社員個人契約の生成AIに誤ってアップロードされていた事故。背景にある『シャドーAI』問題の本質と、中小企業が今すぐ整えるべき3つの対策を解説します。

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疾患名まで、AIへ。RIZAP漏えい事故に見る『私用AI』という新たな脅威

疾患名まで、AIへ。

2026年9月4日、RIZAPグループが謝罪しました。子会社RIZAPの社員が、顧客の氏名や生年月日だけでなく、高血圧症や糖尿病といった疾患情報、さらには保険証記号番号まで、社員個人が契約している外部の生成AIサービスに誤ってアップロードしていたのです(出典: ITmedia)。

疾患情報は「要配慮個人情報」と呼ばれ、個人情報保護法上とりわけ慎重な扱いが求められるデータです。それが、会社が把握も許諾もしていないAIサービスに渡ってしまった。しかも漏えいした件数を同社は明らかにしていません。件数不明のまま謝罪に踏み切らざるを得なかったこと自体が、事態の深刻さを物語っています。

集計作業の「効率化」が招いた漏えい

なぜこんなことが起きたのか。RIZAPは企業や健康保険組合向けに、生活習慣病予防のための「特定保健指導」を手掛けています。今回流出したのは、この特定保健指導管理システムに登録されていた対象者データの一部で、2026年1月1日から8月19日にかけて登録されたものが含まれていました。氏名、生年月日、性別、保険証記号番号、メールアドレス、一部の人については住所と電話番号、そして積極的支援・動機付け支援・重症化予防といった支援形態や疾患情報です。

発生源は、まさにこのデータの集計作業でした。集計作業中に、社員が個人契約の生成AIへ誤ってデータをアップロードしたことで発生しています(出典: ITmedia)。なぜ私用の生成AIが使われたのかは公表されていませんが、会社が許可した業務用ツールではなく、スマートフォンやPCに入っている使い慣れたAIチャットに処理を任せようとする、という状況は多くの職場で起こり得ることです。だからこそ他人事ではないのです。「便利だから使う」という個人の合理的な判断が、会社にとっては制御不能な情報流出経路になる——これがシャドーAI問題の本質です。会社が禁止していないのではなく、そもそも会社の管理下に入っていないツールが、機微情報の入り口になってしまうのです。

「学習には使われない」でも安心できない理由

RIZAPは発生直後に該当のチャット履歴を削除し、学習データとしての利用を停止する設定を行いました。AI運営事業者に照会したところ、個人を特定できる情報を含むファイルはそもそもモデルの学習に使われない、また仮にアカウント側で学習利用を許可していてもアップロードから24時間以内に削除すれば学習には使われない、との回答を得たといいます。今回は24時間以内に削除していたため、同社は「モデル学習に利用された可能性はなく、第三者が生成AI経由で個人情報を得る可能性はない」と判断しました。

ここで注目すべきは、その先です。RIZAPは、AIサービス運営事業者の役職員などが誤アップロードされた情報を閲覧できた可能性については、現在も確認中だとしています。つまり「学習に使われていない」ことと「誰にも見られていない」ことは別問題だということです。学習用データセットに取り込まれなくても、アップロードされたファイル自体は一時的にせよサーバー上に存在し、運営側の人間が技術的に閲覧できる状態にあった可能性は否定できません。一度外部に渡した情報は、削除ボタンを押しても完全に取り戻せる保証がない——これが生成AIに機微情報を投入することの本質的なリスクです。同社は確認が取れ次第、対象の取引先と顧客に個別に案内するとしており、個人情報保護委員会への報告はすでに完了しています。

中小企業が明日から整えるべき三つの守り

この事例が中小企業に突きつけるのは、「うちはAIをそんなに使っていないから関係ない」では済まないという現実です。むしろ、公式なAI活用ルールが整っていない会社ほど、社員が個人の判断でツールを持ち込みやすく、リスクは高くなります。RIZAPが再発防止策として掲げた内容は、そのまま中小企業が真似できるチェックリストになります。

第一に、会社が許諾していない生成AIサービスの業務利用を禁止する方針を、社内に改めて周知することです。RIZAPも今回、この周知を再発防止策の柱に据えています。就業規則や情報管理規程に一文を加えるだけでなく、実際に現場に伝わっているかを確認する必要があります。

第二に、個人情報保護と生成AIの適切な利用に関する教育を、一度きりで終わらせず継続することです。ツールは日々進化し、便利な使い方も次々に生まれます。ルールを知らないまま「効率化」に走る社員を生まないためには、繰り返しの周知が欠かせません。

第三に、情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)に加えて、AIマネジメントシステム(AIMS)のようなAI利用に特化したガバナンス体制の導入を検討することです。RIZAPもこの点を再発防止策に挙げています。中小企業にとってフル規格の認証取得はハードルが高くても、「どの業務でどのAIツールを使ってよいか」を棚卸しし、承認フローを設けるだけでも大きな一歩になります。

生成AIは間違いなく業務効率化の武器です。しかし武器の使い方を決めていない組織では、その武器が思わぬところで自社と顧客を傷つけます。疾患名という最も守るべき情報が流出した今回の事例を、自社のルール整備の引き金にすることが、経営者に求められています。

参考: ITmedia「RIZAPで情報漏えい、顧客の疾患情報など生成AIに誤アップロード」

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