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WAF突破率89%。AIが変えるWeb攻撃の速度と精度

AI生成攻撃がオープンソースWAFを最大89%すり抜けた実測結果を基に、中小企業が今見直すべき防御の考え方を解説します。

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サイバーセキュリティWAFAI脅威中小企業IT脆弱性管理
WAF突破率89%。AIが変えるWeb攻撃の速度と精度

防御の壁が、破られる。

Webサイトを守る番人だと思っていたWAF(Web Application Firewall)が、AIの前ではほとんど機能しない──そんな実測結果が報告されました。ITmediaが2026年8月3日に報じた内容によれば、AIが生成した攻撃コードは、オープンソースWAFの「ModSecurity」を最大89%の確率ですり抜けたといいます(出典)。

「WAFを入れているから安心」という前提が、静かに崩れ始めています。

89%がすり抜けた──WAF検証で起きたこと

研究者による検証では、AIが生成したSQLインジェクションの派生パターンを使った攻撃で、ModSecurityの検知を89%の割合で回避・突破しました。クロスサイトスクリプティング(XSS)攻撃でも80%が突破に成功しています。商用のクラウド型WAFである「AWS WAF」でも約41%が検知をすり抜けており、無料・有料を問わず既存の防御ルールがAI生成攻撃に対して十分に機能していない実態が浮かび上がりました。

これはシミュレーションではなく、実際にWAFへ攻撃を仕掛けて検知率を計測した結果です。数字だけを見れば「10回攻撃されたら8〜9回は素通りする」という水準であり、WAFを最後の砦としてきた企業にとっては前提を揺るがす結果と言えます。

数分で攻撃コード、隙間を突く難読化

なぜここまで突破されるのでしょうか。答えは、AIが攻撃工程そのものを別次元の速度と精度でこなせるようになったことにあります。

従来、攻撃者が脆弱性を突くエクスプロイトコードを書くには、人力で数日から数週間の試行錯誤が必要でした。ところが生成AIを使えば、この工程がわずか数分に短縮されます。しかもAIが優れているのは速度だけではありません。単体では深刻でないとされる小さな脆弱性を複数組み合わせ、実際のシステムに繰り返し攻撃を仕掛けることで、防御をすり抜ける「道筋」そのものを自動的に割り出す能力を持っています。人間のセキュリティ担当者が見落としがちな組み合わせの妙を、AIは総当たりに近い速さで発見してしまうのです。

さらにWAFのすり抜けでよく使われるのが「難読化」という手法です。攻撃コードの見た目を変えることで、WAFが持つ検知ルール(シグネチャ)とのパターンマッチングをすり抜けます。人間が難読化パターンを一つひとつ考える代わりに、AIは無数のバリエーションを機械的に生成し、検知ルールの隙間を突く組み合わせを効率的に見つけ出します。攻撃側にとって、AIは「脆弱性発見・組み合わせ・回避コード生成」という一連の工程を丸ごと自動化する武器になっているわけです。

攻撃はすでに来ている──観測された兆候

これは理論上の脅威にとどまりません。クラウド型WAFを提供するAkamai Technologiesは、攻撃側のAIが生成したと考えられる難読化攻撃の試行を、実際の防御現場ですでに捉えています。研究室での検証結果が、現実のインターネット上で裏付けられている形です。

一方で、AIの活用は防御側にも広がりつつあります。米Anthropicのフロンティアモデルの先行利用権を得たある企業が自社サービスの脆弱性を検証したところ、AIを組み込んだ既存の脆弱性検査ツールと比べて、発見できた脆弱性の数量と検知精度が桁違いだったと報告されています。つまりAIは、使う側が攻撃者であれば脅威を増幅させ、防御者であれば検査能力を底上げする、両刃の技術になっているのです。多くの企業や開発ベンダーがAIを使った「バイブコーディング」を業務に取り入れようとしている今、開発スピードの向上と脆弱性リスクの増大は表裏一体で進んでいます。

中小企業が今すぐ点検すべき防御の考え方

ここまでの事実を踏まえると、中小企業が取るべき判断は明確です。WAFを導入していれば安心という単層防御の発想そのものを見直す必要があります。

第一に、WAFはあくまで「最後の砦」であり「唯一の砦」ではないと位置づけ直すことです。アプリケーション側の脆弱性を早期に修正する開発体制、通信の異常を検知するログ監視、不審なアクセスを遮断するアクセス制御など、複数の防御層を重ねる多層防御への転換が求められます。

第二に、WAFの検知ルールを導入時のまま放置せず、定期的に有効性を検証する運用に切り替えることです。AI生成攻撃は難読化パターンを次々と更新してくるため、静的なルールセットはすぐに陳腐化します。自社のWAFが実際にどの程度の攻撃をすり抜けているのか、外部の診断サービスなどを使って定期的に確認する仕組みを持つことが、今回の実測結果が突きつける最も実践的な教訓です。

限られた予算とIT人材の中小企業にとって、防御を完璧にすることは簡単ではありません。しかし「WAFがあるから大丈夫」という前提を疑うことだけは、今すぐコストゼロで始められる第一歩です。


参考リンク: ITmedia「見えないWeb攻撃──情報漏えい対策の盲点」

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